月刊島民ナカノシマ大学

セミナーレポート

第12回 2010年9月講座

文化講演会「落語にし・ひがし」

埋め尽くされた客席は、まさに満員御礼の様相。今回のナカノシマ大学は、天満天神繁昌亭支配人の恩田雅和さんによる講演と、落語家の笑福亭三喬さん、その弟子の笑福亭喬助さんによる落語2席という豪華な2部構成で行われた。会場は関西では最も歴史の古い紳士社交クラブである大阪倶楽部。渋い近代建築に、笑い声が渦巻いた。

夏目漱石と落語、東西のネタの違い。

まず恩田さんのお話は、かの文豪、夏目漱石が中之島を訪れたことがある、という話から始まった。漱石の『行人』という小説の中には、ある病院が出てくるのだが、それは漱石が大阪滞在時に実際に入院していた病院がモデルであり、当時は大阪倶楽部からほどない場所にあったそうだ。また、落語好きだった漱石の小説には、落語にまつわるエピソードや登場人物を連想させる場面がたびたび登場する。恩田さん曰く「本人がそれを意識していたかどうかは分からない」のだが、落語を知っていると、漱石の小説を読み解く幅が広がることは間違いないだろう。

講演も終盤になってくると、今回の主題である落語の「にし・ひがし」の話題へ。天満天神繁昌亭では、上方落語協会の桂三枝会長の発案で、終演後に出演者の「お見送り」があること、繁昌亭では禁止されているが、江戸落語では飲食が可能といった東西間の違いが紹介された。また、三代目柳家小さんが上方落語から持ち帰った「時うどん」が江戸落語で「時そば」に変化し、さらにそれを桂吉朝が持ち帰って、上方落語で新しい型の「時うどん」が生まれたことなど、落語好きも唸る豆知識も披露。最後に「この後、私の今日の話にゆかりのものをやるかもしれません、しないかもしれません」と、なんとも含みのある言葉を残し、恩田先生の講演は終了した。

待ってました!のネタ披露に、会場が沸く。

満を持して、笑福亭三喬さん、笑福亭喬介さんの落語が始まる。まずは笑福亭喬介さん。恩田さんの講演に合わせてか、ネタは「時うどん」。扇子一本で表現される、臨場感あふれるうどんをすする所作に、思わずつばが出るほどの名演である。

トリは笑福亭三喬さんによる「まんじゅうこわい」。江戸落語版と比べ、上方落語版の「まんじゅうこわい」は登場人物各々の好き嫌いの話や、怪談噺を経て、ようやく饅頭が嫌いな男が登場する大ネタ。こちらも笑福亭三喬さんの軽妙な語りのもと、会場一同大喝采で閉幕。タイトル通り、東西の落語の違いを体験できる講座となった。

講師
恩田雅和
恩田雅和
1949年生まれ。新潟県出身。1974年に和歌山放送に入社。プロデューサーとして活躍する。同時に和歌山で落語の地域寄席を主宰するなど、落語や演芸 に深い関わりを持っている。同局を退社した後、2006年10月に天満天神繁昌亭の支配人に就任。著書や雑誌への寄稿も多く、現在、大阪日日新聞において 「恩田雅和の日日是繁昌」を連載中。繁昌亭での高座に絡めて、上方落語のさまざまな魅力を発信している。
笑福亭三喬
笑福亭三喬
1961年生まれ。大阪産業大学を卒業後、1983年に笑福亭鶴三(のちの6代目笑福亭松喬)に弟子入り。笑福亭笑三(しょうざ)を名乗り、1987年、 師匠の6代目笑福亭松喬の襲名を機に、三喬に改名した。泥棒が登場するネタに定評があり2005年に文化庁芸術祭優秀賞を受賞。また、2007年には繁昌 亭大賞を受賞した実力派である。その風貌とキャラクターから、「落語会のくまのプーさん」の異名も。東京の柳家喬太郎と東西二人会を定期的に開催するな ど、精力的に活動を続けてい

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月刊島民表紙

島民 最終号(2021年3月号) 「月刊島民のつくり方」

いきなりだけど「島民」は今回がラスト。これまでの歴史をふり返りつつ、これからも中之島を楽しむヒントをお教えします!

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