月刊島民ナカノシマ大学

セミナーレポート

第19回 2011年3月講座

「ダイビルをめぐる冒険」

講師/高岡伸一 岩田雅希(ビルマニアカフェ)


大阪時代を象徴した名建築ダイビル。戦後ビルの美を体現した堂島浜の新ダイビル。そして、シマの新たな。シンボルタワーとなった中之島ダイビル大阪の街とともに歩んできたダイビルの軌跡をひも解こうと開かれたナカノシマ大学3月講座。
講師は、2度目の登場と、なるBMC(ビルマニアカフェ)から髙岡伸一さんと岩田雅希さん。2人が水先案内人となった「ダイビルをめぐる冒険」は、歴史を振り返るばかりでなく、これからのビル建築や中之島のまちづくりまでを考えさせる内容となった。ダイビルは1925年(大正14)、大阪 商船(現・商船三井)の本社として、中之島に誕生した。設計は巨匠・渡辺節、製図主任は戦後に名を馳せる村野藤吾さらに構造設計の大家・内藤多仲という、当時最強のチームだった「効率と合理性を重視するリアリスト」だった渡辺の特徴は、装飾的な部分とシンプルな部分、そのメリハリにあったという。飾る部分は徹底的にやる。
たとえば、壮麗な彫刻を施したエントランスやエレベーターホール。まだ珍しかったビル商店街、最上階には豪奢な社交場もあった。「同時代の大江ビルや堂島ビルもそうですが、オフィスビルは当時の最先端建築。複合機能を持ち、都市のシンボル、憧れでした」と髙岡さん。ここにあった事務所で働き、ビルの最晩年を見届けたのが岩田さん(ちなみに月刊島民編集部も)。大大阪時代を伝える喫茶店の運営にも関わった縁で、この名建築を愛する多くの人の想い出に触れた。「歴史を慈しむ幸せな時間を過ごせました」と泣かせる言葉。

一方村野が設計した1958年(昭和33)の新ダイビルは、シンプルな外観の中、随所に建築的美意識を盛り込んだ戦後ビルの典型だった。横に連続する窓、四方に配置した羊の彫刻、美しい階段、奔放なデザイン感覚がさく裂した屋上の造形物、この感覚はBMCの面々の大好物だが岩田さんはもう一つ、御堂筋ダイビルの素晴らしさを挙げた。この時代らしい総ステンレス貼り、今も現役のビルは、既存物件を買い取り、テナントビルに改修したものだそうだ。
こうした歴史とリッチ感を継承しつつ、タワー時代に対応したのが2009年の中之島ダイビル。2013年には、旧ダイビルを保存活用した「中之島ダイビル・ウエスト」も完成の予定。髙岡さんは「ダイビルの歴史を伝えるミュージアムを新たに建てる際はその時代で最高のビルを」と期待を語る一方、戦後ビルが顧みられず次々消えていく現状に警鐘も鳴らした。最後に登場したダイビル株式会社の吉村哲常務は、中之島ダイビル建設の経緯や、関西電力などと進める中之島3丁目共同開発について解説してくれた。
ビルを知ればダイビルがわかる。ダイビルを知れば大阪のビルがわかる。髙岡さんの言葉どおりの講座となった。

今月の月刊島民

月刊島民表紙

島民 最終号(2021年3月号) 「月刊島民のつくり方」

いきなりだけど「島民」は今回がラスト。これまでの歴史をふり返りつつ、これからも中之島を楽しむヒントをお教えします!

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