月刊島民ナカノシマ大学

セミナーレポート

第9回 2010年6月講座

「みんなで橋の話をしよう!」

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中之島の魅力を語るのに、橋は不可欠のポイント。ただ渡るだけじゃなく、眺める・知る・語る楽しみを掘り下げようと、ナカノシマ大学6月講座「みんなで橋の話をしよう!」は開かれた。『月刊島民』で17回にわたった人気連載「橋の話をしよう」のリターンズ企画。講師は、その連載で誌上対談を繰り広げた建築ライターユニット、ぽむ企画の2人を中心に、連載のイラストを担当した本誌編集部の綱本武雄、さらに橋のエキスパート集団である大阪市建設局橋梁担当から西川匡課長。それぞれの視点から繰り出されるトークは、少々マニアックながら橋への愛と敬意に満ちていた。
第1部では、ぽむ企画が連載で取り上げた中之島の橋を振り返りながら解説。その歴史や建設の経緯、設計者の経歴や人となり、構造・デザイン上の見どころや街の景観への影響、それに、この2人ならではの一筋縄ではいかない〝萌え〟ポイント…。一本一本の橋の特徴を捉えた絶妙のキャッチフレーズ(まるでプロレスラーの煽り文句のような…)をつけてみせた。時代を超えた魂のツインズ=桜宮橋&新桜宮橋▽公園と一体化したキング・オブ・ブリッジ=難波橋▽鳥居+高速道路+公会堂の最強萌えコンボ=鉾流橋…。 
 「どの橋もキャラの立った個性派。これだけタイプの異なる橋が揃う場所は珍しいですね」と声を揃える2人。続いて中之島の橋の特徴を「敬う」「歩く」「流す」と3つのキーワードで語った。 
 「敬う橋」とは、先代や先輩への敬意あふれる橋のこと。たとえば、親子亀のような2階建てになっている天満橋。昭和初年にできた下の橋はかつて市電が走った頑強な構造。それを利用して45年後に架けられた上の橋は、下の橋に圧迫感を与えぬよう、わざと少し距離を取ってある。「歩く橋」なら、たとえば天神橋。「真ん中あたりに下へ降りる階段があるのは、途中で橋を降りて剣先公園で遊んでもらおうというコンセプト。照明塔は真下から見ると天神さんの梅鉢の紋になっている。歩いて渡ってこそ気づくポイントです」といった具合。
 
第2部では、ぽむ企画を進行役に、綱本が連載のイラスト制作の舞台裏を紹介。橋の設計や管理を担当する西川課長は、中之島に限らず市内の橋の歴史や構造について、興味深い解説を加えてくれた。 
 昭和初期に1630あった市内の橋は、40年代には約800と半減したが、総面積は増えている。つまり、一本一本の規模が大きくなったということ。橋の寿命は概ね70年だが、現在の大阪の橋は2割が築50年以上。新たに架けるよりも、「高齢化予防」のためのメンテナンスが重要な仕事になっている…など、橋をめぐる秘話が次々と明かされた。 
 最後に各自が独断と偏見によるベスト・ブリッジを発表。ぽむ企画の平塚桂さんは錦橋、たかぎみ江さんは天神橋と桜宮橋、綱本は難波橋。西川課長は「初めて設計を担当したので」という理由で、淀川の菅原城北大橋を挙げた。 
 会場には、綱本による連載イラストを特別パネル展示。また、大阪倶楽部のご厚意により、講義終了後には館内見学タイムも。橋・街・建築と、あらゆるマニア心をくすぐる講座となったのだった。

講師

ぽむ企画
ぽむ企画
平塚桂、たかぎみ江の女性2人による建築ライターユニット。共に京都大学大学院建築学研究科修了。『Casa BRUTUS』などの建築雑誌をはじめ、一般誌・新聞などに幅広く執筆。中でも2人の掛け合いで進む、漫談的な文体で人気を博している。建築学会の会長イ ンタビューから、辛口ビル批評まで硬軟問わず幅広くこなす実力派。「けんちく家対決」や「けんちく雑誌ガイド」など、愛のある独断と偏見に満ちたコンテン ツいっぱいのホームページも必見。http://pomu.tv/

今月の月刊島民

月刊島民表紙

島民 最終号(2021年3月号) 「月刊島民のつくり方」

いきなりだけど「島民」は今回がラスト。これまでの歴史をふり返りつつ、これからも中之島を楽しむヒントをお教えします!

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