月刊島民ナカノシマ大学

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講座・対談・落語会・街歩きイベントを開催。市民の大学「ナカノシマ大学」。中之島のフリーペーパー月刊島民とあわせて大阪・中之島の歴史や文化がよくわかる!

第3回 関西人のための「新潟のええとこ・うまいもんゼミナール」イベント採録レポート

「山スカート」を世に広めた登山ブームの立役者、
アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さんが、
妙高の山と麓のまちを歩いてレポートしました。

四角友里

取材・講師 プロフィール
四角友里(よすみ・ゆり) アウトドアスタイル・クリエイター、着物着付け師 1979年埼玉県生まれ。「山スカート」を世に広めた、登山ブームの立役者。講演、執筆、アウトドアウェアのプロデュースなどを行い、和の感性を活かしたマーモットとのコラボウェアは、世界的なアウトドアギアコンテストの「APEX Awards」を受賞。著書に『デイリーアウトドア』(メディアファクトリー)『一歩ずつの山歩き入門』(枻出版社)。
●公式ウェブサイト:
http://www.respect-nature.com/
●Instagram:
https://www.instagram.com/
yuri_yosumi/

主  催:新潟県観光協会大阪観光センター
共  催:新潟県上越地域振興局
運  営:新潟のええとこ・うまいもんゼミナール事務局(「月刊島民」内)
協  力:アサヒ ラボ・ガーデン
開催日時:2017年12月13日(水)

photo2015年春に北陸新幹線が開業し、関西から新潟を訪れる観光客が増えました。新潟県観光協会大阪観光センターでは、新潟の魅力をより多くの人に知ってもらおうと、「新潟学」イベントを大阪・梅田で開催。10月から3か月連続で、新潟の「食」「酒」「自然」といった魅力を、個性豊かな講師陣がゼミナール形式で紹介しています。
第3回目(12月13日開催)は、アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里(よすみ・ゆり)さんです。

山を歩く楽しみ

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    こんな美しい高山が
    目の前に迫る遊歩道を歩き出す

     私は山歩きをもっと身近なものにしたいと思って活動しています。山の楽しみ方にはいろいろありますが、今回の山旅のコンセプトは、「頂上にこだわらない」「五感で山の恵みを感じる」「自分らしい旅のかたち」です。私は運動が苦手なので、のんびりと自分の体力に合った楽しみ方をしてきました。ですから「山登り」ではなく「山歩き」という言葉が好きなんです。自然との等身大の触れ合いを重ねるうちに、「山歩き」はイコール「スポーツ」ではないと感じるようになりました。体を動かすだけでなく、心を動かすことが、アウトドアの本質にあると思っています。
     また、山だけでなく麓を歩くことは訪れた土地を深く知るための最良の方法。そこに暮らす方々にとっての山の存在や、山や自然が作り出した風土から生まれたモノを感じられるからだと考えています。

     妙高山の麓にある笹ヶ峰高原では、雪を抱いた美しい山々を見ながら約4㎞歩きました。ここはアップダウンがほとんどないので、トレッキング初心者の方でも気軽に景色を味わって歩けます。今回は妙高自然ソムリエの吉田さんに案内をお願いして、気持ちがいいなと思った場所で足をとめ、ゆっくりと歩きました。

自然を敬い、安心・快適な山歩きのウェアやギアを選ぶ

山歩きに必要なもの(5種類)
①リュックサック 両手が自由になれば、まずは街用のリュックサックでもOK。 アウトドア用のものは軽量で、ウエストベルトやチェストストラップが付き、体にフィットするように作られているため疲れにくい。
②雨具 雨は通さず、汗の湿気を外に出すことが大事。防水性だけでなく、透湿性があるものを。
③ウェア コットンの配合率が高い素材は、汗などの水分をためこんで体を冷やしてしまうのでNG。吸汗性と速乾性の高い化繊やウール素材を選べば、快適にすごせる。
④ハイキングシューズ 防水透湿素材のもので、靴底がすべりにくい凹凸があるもの。靴下は厚手で、化繊かウールのものを。
⑤トレッキングポール 歩行を支え、膝への負担や疲労、ケガを軽減してくれる。なるべく軽量のものを選び、使わないときにはリュックに収納できるものを。

五感で感じる山歩き〜笹ヶ峰高原、夢見平

 五感で感じる山歩きとは?
「聴覚」…自然の中で耳をすませ、風が木々の葉っぱを揺らす音や野鳥の鳴き声など森の発する音を聴く
「嗅覚」…落ち葉や木の皮、匂いを嗅いでみる
「触覚」…樹木の肌に触れたり、落ちている松ぼっくりや木の実を触ってみる
「視覚」…四季折々の植物や空を愛でる。今回は、晩秋の木々に丸い宿り木を発見!
「味覚」…湧き出る清水や美味しい空気を体に取り込み、味わう。
  1.  このように五感を駆使すれば、山を歩く楽しみはもっと鮮やかなものになります。
     笹ヶ峰高原は、五感で感じる山歩きを可能にしてくれる場所でした。

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    清水ヶ池にて 牧場の道
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    妙高は空が広くてとても開放的。
    どんどん気持ちが穏やかに。

     森林セラピーロードに認定されている笹ヶ峰高原を歩くのは本当に気持ち良く、ふかふかの落ち葉を踏んだときの音、枯葉が土に還る香り、老木のごつごつした幹、清らかな高原の空気、それらすべてが五感を刺激して心を癒してくれました。

  2.  夢見平へ移動。ダム湖である「乙見湖(おとみこ)」の畔。笹ヶ峰夢見平遊歩道は笹ヶ峰ダムを起点にしてブナやズミ、カラマツなどの深い森の中を歩くコース。こちらも4〜10kmまでさまざまなコース取りができ、歩道沿いでブナやハルニレなどの大木も見られます。1カ所だけ急な石段を登りますが、高い所に立つのは「見晴らし」がいいことが魅力で、森の全容を見渡すと、1本1本の木々の織りなす美しさに見入ってしまいます。例年、笹ヶ峰高原周辺では10月上旬に紅葉が始まり、中旬に最盛期を迎え、ブナやミズナラなどの広葉樹が美しく色づきます。

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    ミズナラの巨木(ご神木)に触れる 笹ヶ峰ダムがつくった、乙見湖(おとみこ)
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    夢見平から新潟焼山
    (標高2400m)を望む
    1本1本の樹木が語りかけてくるような森の美しさ!
  3. 火打山も、おすすめです。ここは、「天上の楽園」。

     妙高山とともに深田久弥の「日本百名山」に選ばれている火打山は中級者向け。笹ヶ峰のキャンプ場から入山して十二曲がりと呼ばれるジグザグの道を上がります。ひたすら急登ですが、クサリ場や岩場が少ないので安心です。
    頂上から見える絶景は、北アルプスの槍・穂高、白馬、立山。そして、日本海に浮かぶ佐渡ヶ島。まるで北アルプスの展望台です。また、ここは「天上の楽園」と呼ばれるほど美しい高層湿原と地塘が広がり、夏には可憐な高山植物が咲き乱れます。特に7月頃に咲く一面のハクサンコザクラは見ごたえがあります。高谷池ヒュッテがあり、シーズンには宿泊できます。

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    火打山(標高2461m)からは、北アルプス連山を一望できる 火打山・高谷池ヒュッテ
    (火打山は四角さんが以前に登った時の写真)
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     妙高高原の森ですごした1日目。森の空気は本当に美味しくって、私たちの吸う酸素を森が作ってくれていることに感謝の気持ちが沸き上がりました。水も空気も、ともすれば忘れてしまうけれど、山歩きすると、私たちは自然なしには生きていけないのだと気づかされます。

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    妙高自然ソムリエの吉田さん(左)と。この土地に住む吉田さんならではのガイドで自然を身近に感じることができました
  4. ●妙高自然ソムリエによる笹ヶ峰トレッキングガイド(4人以上で催行、予約制)
    ・笹ヶ峰半日トレッキングコース(約2時間・1名3千円)
    ・夢見平半日トレッキングコース(約2時間半・1名3千円)
    ●お問い合わせ・お申込み
    妙高市観光協会 tel.0255(86)3911
    http://www.myoko.tv/fascination/climbing-trekking

山と麓、掛け算で広がる旅の物語

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    赤倉観光ホテル(後ろは妙高山)

     笹ヶ峰高原トレッキングの後は、日本有数の高原リゾート・赤倉観光ホテルに宿泊。妙高山(標高2454m)の中腹、標高約1000mに建っていて、目の前はスキー場のゲレンデ。創業80年以上の歴史があるこのホテルは、気象条件によりますが、年に20〜30日ほど、眼下に雲海を見られるホテルとして知られています。訪れた日は、この時期には珍しい雲一つない好天に恵まれ、残念ながら雲海を見ることはできませんでしたが、「晩秋の雨が降った翌日」が雲海を見られるチャンスとか。
     ホテルからの眺めは、雲海が出なくても、遮るものひとつなく班尾山や野尻湖を一望できる絶景。遠くには八ヶ岳まで望める日もあります。お風呂は、妙高山の北地獄谷から引いた、源泉かけ流しの天然温泉(新赤倉温泉)。露天風呂から見た星空と朝焼けがとてもきれいでした。カフェもあるので、歩いたあとにカフェに立ち寄ったり、自家製パンを買うのもおすすめです。

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    赤倉観光ホテルから見る雲海
    (提供:赤倉観光ホテル)
    妙高山からの湧き水を湛えた絶景テラス

    ●赤倉観光ホテル
    TEL.0255(87)2501
    http://www.akr-hotel.com/

  2.  そして旅は麓のまちへ移ります。赤倉温泉では「熊の寝ころび湯」という足湯で「山の恵み」を感じ、妙高観光の定番スポット「いもり池」へ。快晴で水面には“逆さ妙高”がくっきりと映っていました。池のほとりには「妙高高原ビジターセンター」があり、妙高高原一帯の山歩きの情報を入手することができます。

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    熊の寝ころび湯(赤倉温泉) いもり池に映る妙高山
    (2454m)

    池の畔にある妙高高原ビジターセンター
    http://www.myokovc.jp/
    TEL.0255(86)4599

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    茅葺の鮎正宗酒造
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    建物の中に湧き出る地下水(仕込み水)

     鮎正宗酒造では、とても水を大切にしていることに感動しました。決して「水をいじめない」との蔵主さんの言葉の意味は、井戸やポンプで無理やり汲み上げるのではなく、毎時6トン、自然に湧き出る水を建物の中に引き、仕込み水として大切に敬い使い続けてきたこと。その水が醸し出すお酒からは湧き水の香り・味がして、妙高山系の伏流水の「水の恵み」を確かに感じました。

    鮎正宗酒造 http://ayumasamune.com/

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    通称、高橋あめや
    (上越市・南本町)
    http://www.etigo-ameya.co.jp/
    江戸時代より飴一筋に作り続けられている「粟飴」(右下)、ゼリー状の上品な「翁飴」(右上)
    ●歴史と雁木の街、上越市

     上越市でどうしても行きたかった、創業390年以上、日本最古の飴屋と言われる「高橋孫左衛門商店」を訪ねました。「東海道中膝栗毛」の著者、十返舎一九の道中記「金の草鞋」にも登場しています。米から作られているのに「粟飴」と名付けられた水あめは江戸時代から変わらぬ味。その「粟飴」から作ったゼリー状の「翁飴」は、やさしい甘さで山歩きのおやつにもいいなと思いました。食べものを通してその土地を知るのは面白いですね。私にとって旅先の土地を知る最良の方法は、歩くことと食べること。自然の恵みを舌で感じることも、五感で感じる山旅につながっていきます。

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    雁木の街、高田(上越市)

     上越・高田は旧北国街道の交通の要衝で、雁木のある街。雁木とは家の軒からのびた庇(ひさし)で、私設アーケードのようなものです。3メートル以上雪が積もるため、人が通れるように各家が私費で作っています。「どうぞうちの前を通ってください。そのかわりあなたの家の前も通らせてくださいね」という、お互い様の精神が根底にあると言います。今は昔のような大雪は降りませんが、雪国の昔の人の知恵と思いやりが伝わってきます。

     自然×ホテル・温泉・お酒・食・街の歴史という、山だけでも、街だけでもない掛け算の中に、自分だけの旅の物語が生まれました。その時の自分と自然の化学反応は面白いもの。みなさんが訪れた時にはまた違う化学反応が起こるでしょう。

本年度、ゼミナール最終回を終えて

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     四角友里さんの「五感で感じる山と麓を歩く妙高山旅ものがたり」は、四角さんの自然を愛する清らかな心を垣間見る旅でした。登山口から下山口で完結する「山登り」とは違い、観光スポットを駆け足で回るだけの旅行とも違って、「山と麓」を自分の感性で歩き、その土地の魅力を吸収する旅のあり方のご提案として、参加者が引き込まれ、魅了されてゆくひとときでした。葉っぱ1枚、木の実1個も、山から湧き出る温泉も、お酒の仕込み水も、四角さんの感性を通していっそう魅力が増幅されたように思います。
    「着物の着付け師が、どうしてまた山歩きをされるようになったのですか?」と いう参加者のご質問に、「着物を着る時のキリリと引き締まる思いと、山じたくを 整えてウェストベルトをきゅっと締める感じが似ています」とお答えになった四角さん。なるほど、とうなずく方も多かったと思います。

     四角さんはご自身で決して健脚ではないと言います。今回はよくある旅レポとは一線を画し、「山の頂上にこだわらない」「五感で山の恵みを感じる」「自分らしい旅のかたち」をお話しいただきました。スペースの都合でご紹介できませんが、山歩きでは「“しんどい”を減らし、“楽しい”を増やす!」という工夫を実践する四角さんが紹介した15gの軽い財布や、メイク道具の重量と体積を減らすためのテクニックなどにも、女性参加者から納得の声が挙がっていました。
     荷物をたくさん詰めたキャリーバッグをごろごろ引っ張るのではなく、お気に入りの山歩き用のコンパクトなリュックサックに、アウトドアウェア、シューズを身につけて身軽に歩く「まち歩き」もとても合理的に思えました。
     よすみスタイルの「山旅」のご提案に感銘し、「山歩きを始めたい」「笹ヶ峰高原を歩いてみたい」という声も届いています。関西にいがたゼミナール、本年度最終回に相応しい心にささるレポートとなりました。機会があれば、こんどは佐渡ケ島の山と麓を歩いていただきたいですね。四角さん、ほんとうに丹念な取材と丁寧なレポート、ありがとうございました。(事務局)

「妙高自然ソムリエ」と歩く笹ヶ峰、夢見平トレッキングについて
http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=14542

大阪で新潟県の観光情報、パンフレットを入手したい方は、
大阪駅前第1ビル8階 、新潟県観光協会大阪観光センター(新潟県大阪事務所内)へお越しください。(大阪市北区梅田1-3-1-800 大阪駅前第1ビル8階)

06-6348-9720
・大阪駅(梅田駅)から徒歩で約5分、JR北新地駅より徒歩で約1分
・営業時間 平日8:30〜17:15(土日祝休)

新潟県のお酒や特産品が梅田で買える!
●新潟県アンテナショップ
「じょんのびにいがた」(ホワイティうめだ内)http://jn-shokurakuen.com/
新潟のお酒や郷土料理を楽しめる!
●新潟県アンテナショップ姉妹店
「新潟うまいもん じょんのび」(阪神西宮駅えびす口改札外)
新潟県のことをもっと知りたい方は、
●新潟県観光公式サイト
「にいがた観光ナビ」https://www.niigata-kankou.or.jp/
●関西から妙高高原へのアクセス
・JR大阪駅から 特急サンダーバード金沢乗り換え、北陸新幹線「上越妙高」駅下車(約4時間20分)
・上越・妙高エリアでの移動 【鉄道・バス】
えちごトキめき鉄道「上越妙高」駅〜「妙高高原」駅下車、 シーズン期間中は、妙高高原駅前から周遊バス「ぷらっと妙高号」(1日乗り放題大人1名500円)、「笹ヶ峰バス」(片道大人1,000円)が運行します。
※例年、11月中旬〜4月中旬(5月)は運休。運行期間はお問い合わせください。 http://www.akakura.gr.jp/bus/
【レンタカー】
「上越妙高」駅前に各レンタカー会社の営業所があります。
上信越自動車道「上越高田IC」〜「妙高高原IC」〜妙高高原